腹を割って話そう。

BOOKS WORK

わたしの大好きな『水曜どうでしょう』藤村ディレクターの有名な(笑)言葉でもありますね。

子どもにも親にもそれぞれの『視点』があります。同じモノを目の前にしても『見えているもの』・『見ている位置』は違うものです。そんなことをちょっと書いてみました。

最初に断っておきますが,『家族』というものを十把一絡げに語ることは無理です。ですから,あくまでも『考えるための叩き台』としてお読みください。

▶︎学生諸君に一言。

保護者は『ちゃんとやっているの?』となぜ聞くのか?

それは『心配だから』

ごちゃごちゃ聞かれるのが嫌なら,スケジュールを共有しては?

それもいやなら,ちゃんと説明しましょう。

スポンサーに説明をして安心させるのも一つの仕事です。

 

▶︎保護者の皆様に一言。

『ちゃんとやっているの?』『ちゃんと予定通りやっているの?』はコミュニケーションではありません。

『やっているわ』のように答えは1つに決まっています。

『今日はどんな予定なの?』などの方がいいですね。

注意:家族問題は難しいです。今回の話は,おもに私を予備校での講義を実際に受講してくださった『塾生たち』,『お父様,お母様,そして保護者の皆様』からのお話・相談を元にしております。ですので,とても当てはまる範囲は狭いかもしれません。それでも,参考になる部分もあるのではないか?と思い,文字に起こしてみました。

自分もずいぶん『家族』には悩んできました。いまも悩んでいます。

また,多くの学生たち・保護者の皆様からご相談を受けてきました。学生が相談しながら号泣するのはもちろん,保護者さまが目の前で号泣されることも何件もございました。

(私,河合塾では珍しい講師かもしれません。全学年全レベルを指導し,教材/模試作成し,映像講義して,全国で講演会をしつつ,河合塾で2004年に働き始めてから休むことなく保護者さまとの2者面談・3者面談を行なってきました(▼校舎によっては,保護者様との日程の関係でチューターが代わりに面談をすることもございます。その後チューターと情報を共有し生徒面談などの対応を行なっております。)

もちろん例外はありますが,自分の家族といままでの相談から次のように考えます。

家庭内で『腹の読み合い』を始めたら,家族は崩壊します。

めんどくさがったら,家族は崩壊します。

  • 学生諸君へ。『なんで親はわかってくれないんだ』

当たり前です。分かるわけありません。

甘えてんじゃない。

所詮は別の人間です。説明しないとわかりません。

保護者は分からないから心配になり,心配がイライラになり,イライラが雑な質問になっているのです。

まず自分の保護者も『別の人間』だという認識を持たれてはいかがでしょうか?

つまり,学生のみんなから歩み寄ることも必要です。君たちが親や保護者を選べないように ,親や保護者も君たちを選べません。もちろんそれでもダメな場合もあります。そうなら一刻もはやく『家を出る』ことです。勉強でもプログラミングでもいいからスキルをつけて独立しましょう。

でも,努力もしないでごちゃごちゃ言うのは反則です。保護者だって,多くの人は君たちと同じように若い頃があり反発していた時期があります。でも,いろいろな経験にぶちあたって自分の意見が形成されていったり,自分の意見を徐々に変えてきたわけです。

保護者だって,親だって,そして君たちもみんな『初めて』なんです。

『長男を育てるのは3回目で徐々にコツをつかんできました』なんて親はいません。『長男を育てる』のは1度しかありません。みんな,『初めて』です。『初めて』で分からないから『手探り』だし,『初めて』で分からないから『過去の自分の経験を真似する』しかないんです。

保護者はみなさんのことを本当に心配しています。

駅のホームで人に当たったはずみで事故に巻き込まれないか?歩いていて車や自転車との交通事故に巻き込まれないか?美味しそうに食べているご飯が喉につまらないか?

ふと心配になってたまらなくなります。(もちろんそうじゃない場合,とても不幸な場合もあります。そういう問題にもしっかり取り組んでいかねばなりません)

だから,勇気を出して腹を割って歩み寄りってみてください。

 

これ,自分へのメッセージだ…

 

  • 保護者の皆様へ。『うちの子はなんでこんなんなの』

難しくありません。あなたを見て育ったんです。親が本を読まないのに,子どもがなぜ自発的に本を読むのですか?

よく頂いたご質問です。『どうしたら本を読むようになりますか』。僕の答えはいつも同じです。『保護者の方が楽しそうにたくさんの本を読まれるのが一番だと思います』。

忘れないで下さい。思い出して下さい。保護者の皆様も10代の頃,あんなに反発していたではありませんか。なのに,いつから『10代のあの叫び』は『単なる戯言』になってしまったのでしょうか。

子どもたちは私たち大人以上に毎日が『初めて』です。

『金が1人で稼げる』ようになれば,その環境から別の環境に「逃げる」ことも可能です。ある意味,大人は「楽」です。しかし,多くの子どもは『環境を人質に取られている』という可能性もあります。

『反発なんかしたことがない』という人もいるかもしれませんが,そうだとしても子どもが反発してはいけない理由はありません。

『それでもイライラする』のは『自分は若い時,あれだけ我慢したのに』という“嫉妬(?)”,『自分は我慢できるのになんでこの子は・・・』という“上から目線”が背後にあったりするのではないでしょうか。

『不倫は許せない!(裏の声:自分は我慢しているのに!)』などという動員された発想と同値?相似形?相同形?,表現はなんでもいいですが,つまり同じだと感じるわけです。『自粛警察』という思慮の浅はか極まりないものも同じ論理でしょう。

まずお子様も『別の人間』だという認識を持たれてはいかがでしょうか?

次のようなフレーズを聞いたことがあります。

「良い親」=「名スポンサー」でもある

確かにご家庭の中に『コーチング的』な『ビジネス要素』を持ち込むのは疲れるかもしれませんが,『別の人間が一緒に生活する』わけですから,少なからず,そういった視点も必要になるのではないでしょうか。

そして,定期的に(半年に1回?1年に1回?ご家庭に依りますが)保護者さまの素直な思い・考えを伝えてはいかがでしょう

  • 『保護者としては○○と思う。で,あなたはどうか?』
  • 『なるほど。でも,●●という考え方[リスク]もある。親としてはこういう心配をしている。』

答えは出ないし,最後は喧嘩になってしまうかもしれません。号泣し合うかもしれません。それでも話し合う。できる限り冷静に,でも情熱を持って,愛情をもって,本音で話して欲しいと思います。(それが難しいんだけど・・・)

多くの子どもは『親の涙』に驚くものです。少なくとも私自身,幼稚園くらいのとき『親って泣くんだ』って思うことがありました。

まとめ

学生諸君も保護者の皆様もすぐに結論を出そうとしないでください。数年?もしかしたらもっと時間がかかるかもしれません。お互いに本音を受け入れるのには時間がかかります。

子どもも大人も,状況のよって思い・想いも考えもコロコロ変わります。

お互いが考える『入り口と出口』がズレていても,思惑は違えど『過程が同じ』になることもあります。その逆もまたしかり。

何度もいいますが,当然ながら家族問題を類型化するのは無理だと思っています。不可能です。『人』が一人一人異なるように『家族』も異なる要素のアルヒーフなわけですから・・・

だからこそ『長い時間をかけて擦り合わせていく』という考えはどうでしょう。

そんな余裕などない!と思われる方も多いやもしれません。

しかし,複雑な関係は短時間では解決しません。時間がかかることで複雑化することもありますが,単純化していくこともあります。子どもも親も考え方が変わることもあります。(戦略的なお父様,お母様,保護者の方がいらっしゃるのも事実ですよね)

焦っても仕方ないこともあります。時間が解決することもあります。残念ながら生きている間に解決できないこともあるかもしれません。それでも,分かろうと努力する。いや,そもそも『分かる』なんて思い上がりかもしれません。『理解しようという努力の過程』そのものが大切なのかもしません。

『なんでも言葉にして,腹を割って家族会議。』

繰り返しますが,家族問題は難しいです。今回の話は,おもに私を予備校での講義を実際に受講してくださった『塾生たち』,『お父様,お母様,そして保護者の皆様』からのお話・相談を元にしております。ということは,見方を変えれば,相当『恵まれた悩み』でもあるとも言えるかもしれません。ご自分の状況に合わせて参考になさってください。

以前私が河合塾の『親子セミナー』という会で配布した資料につけたものの一部を抜粋したものです。毎年保護者会で話していた内容です。これ一度は出版を考えていたのですが,忙しすぎてできませんでした。ですので,どこかのタイミングで note で販売したいと思っています。

● 受かる子と親 VS 落ちる子と親 一部抜粋
〜「親」編 〜
 
(ア)   
「落ちる子の」親は「自分は本を読まずに,本を読め!と言う」
「受かる子の」親は「本を読め!とは言わずに,自分が本を読む」
 
▼「落ちる子の」親
「本を読まない」と相談する親に限って自分が全く本を読んでいない
×「こういう本を読みなさい!」
×「新聞でも読んだらどうだ?なんでこんなことも知らないの?社会常識だぞ!」
 
▼「受かる子の」親
○「この本,〜で面白いかった。ここに置いておくね」
○「この記事,知っているか?…なんだって」(まあこれもウザイか(笑))
家庭環境とは,親の意識の問題ではなく,家庭の習慣の問題 →親が本を読んだり,何かを調べたりして,それを家族で共有する →これが押し付けがましく,ワザとらしくなってもダメ。『共住共食』(宮台)の重要性。
 
(イ)   
「落ちる子の」親は「勉強法などを調べて,アドバイスし,一緒に勉強する」
「受かる子の」親は「大まかな受験の流れと必要な費用を知っている」
(ウ)   
「落ちる子の」親は「子どもに直接聞かず,塾・予備校に聞く」
「受かる子の」親は「子どもと腹を割って話をする(努力をする)」
 
▼「落ちる子の」親
×「模試はどう?ちゃんとやってんの?ちゃんと質問行きなさい!」
×「そろそろ夏休みだろ。ちゃんとやってんのか?」
×「悩んでいるなら,なんで言わないの?だからダメなんでしょ?」
① 問題集の種類などに詳しくて,過度に子どもの勉強に干渉 →低学年から「うちの子は辞書を引かない」と嘆く →では,自分が中1の頃は…?
② 受験を経験している親は,自分の子を見ていて「もどかしい」(▼親は誰もが初めて,「親」を経験するように,「子ども」も初めて「受験を経験」しています)
③ 自分も一緒に受験していると思い込みすぎて,子どもの目線で見ていない(中学受験型勉強からの脱却)(▼もう子どもは16~18歳前後。11,12歳ではありません。)→受験するのはあくまで子ども。親離れ/子離れがヘタ。→もちろん親子のコミュニケーションツールになっている現状は否定できないが。。。
④ 必死になって干渉してしまう原因は「大学受験に成功さえすればイイ」が本音にある?!?!
 
▼「受かる子の」親
○「そろそろ夏休みだな。大変だけど乗り切れよ!」
○「模試はどう?悪くても次があるじゃない!質問してみたら?」
○「悩んでいることがあるなら,話せる範囲でいいから話しなさいね!」
① 子どもが欲しているのは「愛情」「寛容」「認容/承認」。
② だからといって,子どもの態度・要求を鵜呑みにしない →自分の人生経験に照らし合わせて,威厳を持って「良い・悪い」を伝え,「出来ることは出来る」「出来ないことは出来ない」「良いことは良い」「悪いことは悪い」と腹を割って話し合う勇気を持つ。
③ 一緒に悩み,苦しみ,怒り,喧嘩し,泣き,そして喜ぶ。
 
   
「落ちる子の」親は「塾・予備校を合格させてくれる単なる接客業として位置づける」
「受かる子の」親は「塾・予備校を単なるペースメーカーとして位置づける」
 
▼「落ちる子の」親
① 塾・予備校に「任せれば」受かると思っている
 
▼「受かる子の」親
① あくまで塾・予備校はきっかけ!「任せる」のではなく「活用」する
②「自分でやらないと何も変わらない」=「汝,自らを求めよ」→指示待ち新入社員ではなく,提案型新入社員 ➡ 塾・予備校=ダイエットマシーン+専属トレーナー(講師とチューター)
 
〜「子」編 〜
 
(カ) 
 「落ちる」子は「学科そのものより,将来の夢ばかり語る」
「受かる」子は「将来の夢より,学科そのものに面白さを見いだす」
 
▼「落ちる」子
① 学科にはあまり興味が無いが,将来の夢がある。
② 今の時代では,目標達成主義=実利主義。
→子どもも「意味があるかないか」「価値があるかないか」で判断。「勉強は所詮はプレステという遊びやゲーム」説が重要。ゲームをやるのは『社会に出て役に立つから』ではない。ただ,面白いから。『教科・科目・学問分野』に感動している大人に『感染』(宮台)する。
 
▼「受かる」子
① 成績が上がっていく学生は「英語が面白い」「数学が面白い」「国語が面白い」という学科そのものへの「愛」があることが多い →勉強マシーンは疲弊しきって,大学で消滅。新たなことに気づければいい。
 

(ケ)   
「落ちる」子は「塾・予備校に依存して文句を言いながら,結局自分でやらない」
「受かる」子は「塾・予備校を活用して,黙って結局自分でやる」
 
▼「落ちる」子
①問題集・塾・予備校に詳しい / 問題集ばかり買っている(プレイヤーではなく評論家)→ あの問題集はイイ,この問題集はダメ(自分がやっていない言い訳をしているだけ)。
② やたら計画ばかり立てている/一切計画を立てない。
 
▼「受かる」子
① 勧められた問題集をまず最後までやる
② 分からない部分が出てきたら,他の本に変えるのではなく,調べて,質問する
 
(コ)   
「落ちる」子は「自分で調べないで,質問する」
「受かる」子は「自分で考えて,調べて,そして質問する」
 
▼「落ちる」子
「これ,分かりません」(もちろん,まず何をどう調べたらいいかわからない学生もいる)
 
▼「受かる」子
「ここまでは分かるんですけど,ここからが分かりません」

20年以上この業界にいて『行動の類型化』という観点からみていくと,上記のようなことが大まかに言えると思います。

もちろん例外は多くあります。講演会でも講義でも何度も言っていますが,

  • 失敗の仕方はみんな共通。
  • 成功の仕方は人それぞれ。

だから,これを叩き台としていろいろ考えてみてください。

今日はここまでです。

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